「いつか自分で公演を打ってみたい」──稽古場でそう話したことがある俳優・ダンサー・声優・パフォーマーの方は、決して少なくないはずです。
でもいざ動こうとすると、会場・予算・宣伝・チケット販売・当日運営……検討事項の多さに圧倒されてしまうのもまた事実です。

本記事では、友人キャスト 3〜5 人と一緒に 50〜150 席規模で初めて打つ自主公演を想定し、6 ヶ月前から当日までに必要な準備をチェックリスト形式でまとめました。 「不安だけど、最初の一歩を踏み出したい」という方の助けになれば幸いです。

本記事の数字について

本記事の数字(予算・動員)はあくまで業界の概算レンジです。公演内容・会場・地域・出演者の集客力で大きく変動します。

ACTぴっとStage+ なら、公演登録料・月額 0 円で今日からチケット販売を始められます。主催者登録(無料)→

自主公演とは(プロデュース公演・劇団公演との違い)

「自主公演」とは、出演者本人またはそのグループが企画・制作・運営の主体となって行う公演を指します。

種別 企画主体 出演者の役割 リスク負担
劇団公演 劇団 所属俳優として出演 劇団
プロデュース公演 プロデューサー・制作会社 キャスティングされて出演 制作会社
自主公演 出演者本人・小グループ 出演しつつ企画も担う 本人

自主公演の最大の特徴は、「自由度の高さ」と「収支リスクを自分で背負う」ことの両立です。 やりたい作品・キャスティング・演出を自分で選べる代わりに、赤字が出れば自分でかぶる構造になります。

自主公演を始める前に決めるべき 5 つのこと

具体的な準備に入る前に、次の 5 点を共催メンバーと擦り合わせておきます。ここが曖昧なまま走り出すと、後の意思決定で揉めやすくなります。

① なぜやるのか(目的)

「キャリアの一歩」「やりたい作品の実現」「自分のファン層への直接接点」「制作経験を積む」など。目的によって、規模感も予算配分も大きく変わります。

② 誰とやるのか(共催・出演者)

3〜5 人程度がバランスが良い規模感です。共催か出演のみかで、利益分配・赤字負担のルールが変わります。

③ どれくらいの規模か(客席数・公演回数)

初回は 50〜150 席 × 2〜4 ステージが現実的なレンジです。 客席数が小さいほど赤字リスクは抑えられますが、固定費の比率が上がります。

④ どこまでお金をかけるか(予算)

総予算は規模・体制で大きく変動します。出演者ギャラを無償化やノルマ制で圧縮した最小構成では 50〜100 万円、出演者・スタッフへ固定報酬を出す体制では 150〜250 万円が一般的な目安です。道草はどちら?等の業界記事でも、小劇場演劇は概ね 100〜200 万円規模で組まれる例が多いと紹介されています。

⑤ 赤字が出たらどうするか(リスクの取り方)

事前に「赤字は誰がどう負担するか」を書面で合意しておきます。曖昧にしておくと、本番後にもっとも揉める論点になります。

全体スケジュール(6 ヶ月前〜当日)

50〜150 席規模の自主公演の場合、準備期間 6 ヶ月を目安に動くと無理がありません。

時期 やること
6 ヶ月前 企画決定、共催・出演者確定、会場仮押さえ、台本決定
5 ヶ月前 会場本契約、稽古場確保、予算計画策定、上演権確認
4 ヶ月前 スタッフ(照明・音響・舞台監督)依頼、宣伝美術発注
3 ヶ月前 チケット販売開始、SNS 告知開始、稽古スタート
2 ヶ月前 チラシ配布、メディア配信、稽古本格化
1 ヶ月前 衣装・小道具最終確認、公演公式リハ、当日運営マニュアル整備
公演週 仕込み・場当たり・ゲネプロ、当日
公演後 2 週間 精算・収支報告、SNS 振り返り、観客へのお礼

スケジュール感の詳細は、小劇場のチケット販売 完全ガイドでさらに具体的な数字とともに解説しています。

予算の作り方と収支のリアル

「自主公演 予算」で検索される方が一番気になるところです。100 席 × 4 ステージ規模の概算予算を、出演者ギャラ・スタッフ人件費・予備費まで含めた形で以下に示します。数字は下北沢クラスの劇場・標準的なスタッフ単価をベースにした目安で、実際は会場・地域・座組によって幅があります。

支出側(100 席 × 4 ステージの目安)

費目 概算 補足
会場費 25〜70 万円 下北沢クラスの 80〜160 席で 1 日・公演枠・週パックで料金体系が分かれる。3〜6 日利用で 25〜70 万円程度が目安
上演権・台本料 0〜10 万円 オリジナル脚本なら 0 円、既成戯曲は要許諾
照明・音響 30〜80 万円 プラン料・オペレーター費・仕込み増員・機材追加込みで 30〜80 万円程度。一般単価はチーフ 4 万円・スタッフ 3 万円/日
舞台監督・制作スタッフ人件費 10〜50 万円 舞台監督 4 万円/日 + 制作助手等。学生スタッフや交通費実費のみで圧縮することも可能
出演者ギャラ 0〜50 万円 ノルマ・チケットバック制なら実質ゼロ。固定ギャラなら 1 ステージ数千円〜3 万円 × 公演数 × 人数
美術・小道具 5〜20 万円 DIY 度で変動
衣装 3〜15 万円 私服活用 / 衣装屋発注で変動
宣伝美術(チラシ・ポスター) 5〜15 万円 デザイン + 印刷
稽古場代 5〜15 万円 2 ヶ月 × 週 2〜3 回が目安
制作費・記録 5〜20 万円 映像撮影・パンフ・雑費
予備費・保険 3〜10 万円 急な追加発注・損害保険等。組まないと事故時に持ち出しになりがち
合計(モデル別) 低予算モデル: 90〜130 万円
標準モデル: 150〜220 万円
固定ギャラ・増員あり: 250 万円超
業界紹介例でも、90 席級・7 公演で約 240 万円という試算例があります
補足:「ノルマ/チケットバック制」による圧縮

小劇場では、キャストが一定枚数(目安 20〜30 枚)の 販売責任を持ち、未達分を負担するチケットノルマ制や、売上枚数から歩合をもらう チケットバック制(1 枚あたり 500〜1,000 円程度)が広く行われています。実際の運用は「預かりチケット」「未達精算」「出演者買い取り」など団体ごとに差があります。これらの仕組みを組み込むと、主催者から見た現金支出は会場費・スタッフ費中心に圧縮され、最小構成で 50〜100 万円規模で実施されるケースもあります。

参考(実例・体験談として): 小劇場公演でギャラが出ない話(note) / チケットバックとは(アットオーディション) / 小劇場の劇場費まとめ(note)

収入側(同規模)

満席想定の総席数: 100 × 4 = 400 席

想定動員率 動員数 チケット単価 4,000 円 チケット単価 5,000 円
満席(100%) 400 名 160 万円 200 万円
現実的(75%) 300 名 120 万円 150 万円
要警戒(50%) 200 名 80 万円 100 万円

初めての自主公演では 動員率 50〜60% を保守的な売上前提として置くのが現実的です。60% を超えれば「上出来」と評価される世界で、初公演で 75% を狙うのはかなり強気の計画になります。 ただし、支出が標準レンジまで膨らむとこの動員では赤字になり得るため、「50% 動員時の赤字上限はいくらまで許容できるか」を先に決めておくのが鉄則です。 出演者 1 人あたり 20〜30 名動員が一つの目安とよく言われますが、これはあくまで「ノルマとして達成すべき水準」であり、新人主体の場合は 10 名以下になることも珍しくありません。 出演者 3〜5 人の場合、まずは出演者集客で 60〜150 名程度を見込み、残りを SNS・チラシ・口コミでどう積み上げるかを設計するのが現実的です。 100 席 × 4 ステージ(=動員 300 名 / 75%)を達成するには、出演者の知名度・既存ファン基盤・宣伝期間がそれぞれ別途必要になります。

物販で補強する選択肢

ブロマイド・パンフレット・ステッカーなどの物販を加えると、1 観客あたり 500〜1,500 円の追加収益が見込めます。 100 席 × 4 ステージなら 15〜45 万円の上振れ要因になり得ます。 物販の同時販売は グッズ・物販の同時販売で詳しく解説しています。

ポイント

予算は 赤字が出ても困らない範囲で組むのが鉄則です。「動員 75% で黒字、50% で赤字 20 万円まで」のように、最悪シナリオを数字で握っておきましょう。

会場の探し方と押さえ方

会場選びで失敗すると、後工程すべてが破綻します。

会場のタイプと相場感(東京近郊・2026 年時点)

会場タイプ 客席数 1 日あたり料金目安
区民ホール・公共施設 100〜300 席 2〜8 万円
小劇場(民間) 50〜200 席 5〜20 万円
貸しスペース・ライブハウス 50〜100 席 3〜10 万円

会場選びで見るべき 5 つの軸

  1. 客席数: 想定動員に対して 70〜80% 埋まる規模が理想
  2. 設備: 照明・音響の常設機材、楽屋数、搬入動線
  3. アクセス: 駅から徒歩 10 分以内が動員のしやすさに直結
  4. 料金体系: 仕込み日・バラシ日の料金、平日 / 土日の差
  5. 予約取りやすさ: 人気劇場は 半年〜1 年前から予約必須

会場確保の進め方

チケット販売の準備

販売手段の選択肢は大きく 3 つあります。

選択肢 メリット デメリット
チケット販売システム(公式) 自動化・記録・精算が楽 手数料がかかる
自前フォーム + 銀行振込 / 当日精算 手数料が安い 入金確認・座席管理が手動で煩雑
Excel で取り置き管理 完全無料 ダブルブッキング・支払い漏れ多発

50 席 × 数ステージ程度なら Excel でも回せますが、100 席を超えると公式システム導入が現実的です。

自主公演に向くチケットシステムの条件

公演登録料 0 円の仕組み演劇向けチケット販売システム比較 2026で詳細を比較しています。 キャスト別販売については、出演者ごとの集客貢献を可視化する仕組みとして特に重要です。

抽選 / 先着の選び方

初回の自主公演は 先着販売がシンプルで扱いやすい選択です。 動員予測がつきにくい段階で抽選販売を導入すると、運用コストの割に効果が薄くなりがちです。 詳しくは 抽選販売 vs 先着販売を参照してください。

宣伝・集客の現実解

初回の自主公演では、「出演者の SNS」 + 「キャスト経由の声かけ」が集客の中心になりやすいと言われます。 プレイガイド単体の集客には過度に依存しないほうが安全で、自主の発信と組み合わせる前提で計画を立てるのが現実的です。

集客の優先順位

  1. 出演者・スタッフの SNS 告知(最大の流入源)
  2. キャストの直接声かけ(電話・LINE・口頭)
  3. チラシ折込(劇場の他公演に挟んでもらう)
  4. 演劇情報サイトへの掲載(無料の媒体から)
  5. 有料広告(Instagram 広告・X 広告は初回は推奨しない)

SNS で書くべき 3 種類の投稿

種類 タイミング 内容例
告知 3 ヶ月前〜 公演情報・チケット販売開始
稽古中 2 ヶ月前〜 稽古場の様子・キャストインタビュー
直前 / 当日 1 週間前〜 カウントダウン・空席状況

「観客の購入ハードルを下げる工夫」は 会員登録不要のメリットでも触れています。 会員登録必須のチケットシステムは、SNS 経由で初めて知った観客の離脱率が非常に高くなります。

当日運営でハマりがちな落とし穴

初めての主催で起きやすいトラブルを 5 つに絞ってお伝えします。

① 受付スタッフ不足

公演直前は出演者全員が舞台裏。受付・もぎりを誰がやるか 本番 1 週間前までに必ず確定させておきます。 友人にお願いするのが現実的です。

② 当日券・取り置きの混乱

紙の名簿 + Excel の二重管理で、当日券の販売情報が共有できずダブルブッキング、というケースが多発します。 電子チケットシステムを使うか、当日券専用ノートを 1 冊用意して管理を一元化します。

③ 物販レジ準備不足

釣り銭が足りない、計算ミスで赤字、商品在庫が分からない──物販はレジ・在庫管理シート・釣り銭(千円札 30 枚 / 百円玉 50 枚程度)を本番前に必ず準備します。

④ 公演中止・延期時の対応未整備

体調不良・天災で公演中止になる可能性はゼロではありません。返金規約を販売ページに明記し、緊急連絡網も作っておきます。 実務は 公演中止・延期時のチケット返金対応 完全ガイドで詳しく解説しています。

⑤ 終演後の精算ルール曖昧

「打ち上げ前に売上の概算をその場で出す」「物販の在庫と現金を必ず合わせる」「精算は公演から 2 週間以内に共催メンバーで集まる」など、事前に手順を文書化しておきます。

まとめ:最初の一歩のチェックリスト

最後に、今すぐできる最初の一歩のチェックリストを置いておきます。

「やってみたい」を「やる」に変える最大のハードルは、最初の 1 行を書くことだと言われます。 共催メンバーに送る LINE 1 通、会場の見学申し込みフォーム 1 件──そこから自主公演は始まります。

ACTぴっとStage+ は、公演登録料・月額 0 円のチケット販売プラットフォームです。 「とりあえずアカウントだけ作って、管理画面でどんな機能があるか触ってみる」だけでも、自主公演のイメージは大きく具体化します。